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もう戻れない!?リモートワークによって変化した価値観と時間との付き合い方

もう戻れない!?リモートワークによって変化した価値観と時間との付き合い方

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コロナ禍において、多くの企業でリモートワーク(テレワーク)導入が一気に加速しました。急きょ自宅で仕事をすることになったものの、今ではすっかり慣れて「以前のようなフル出社には戻れない…」と感じている人、労働観や時間の使い方が変わった人は多いのではないでしょうか。

リモートワークにはメリットがある一方で、デメリットもあります。リモートワークが浸透してきたからこその課題もあるでしょう。特に今回は、リモートワークにおける時間管理にフォーカスし、その難しさや時間管理方法を解説します。

リモートワークの実施状況

フリーランスや副業ワーカーの方であれば、以前から当たり前だったリモートワークですが、企業で働く人にとっては、コロナ前後で働き方が大きく変化したといえるでしょう。

令和3(2021)年11月に実施された「内閣府|第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、コロナ前の2019年12月には、10.3%だったテレワーク実施率は、最初の緊急事態宣言下の2020年5月には27.7%と一気に上昇。その後、出社への回帰、再度の緊急事態宣言などで上下動はあるものの、2021年10月には32.2%となっています。

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内閣府|第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査

この調査によれば、次のようなこともわかっています。

・企業規模が大きくなればなるほど、リモートワーク実施率は高くなる

→2021年9-10月時点で、1000名以上の企業の実施率は46.7%、300~999人で32.4%、30~299人で26.7%、2~29人で20.9%

 ・業種別でみると、情報通信業でのリモートワーク実施率がダントツ

→情報通信業は78.1%、次いで電気・ガス・水道業(45.3%)、金融・保険・不動産業(44.5%)。最も低いのは医療・福祉の12.6%。

 ・全国平均と東京23区のリモートワーク実施率は20%以上の差がある

→2021年9-10月時点で東京23区平均55.2%、全国平均は32.2%、地方圏23.5%。

以上のように、企業規模や業種、就業地域などによってリモートワーク実施率は大きく異なることが伺えます。

また、仕事以外の「子育て」「住環境」についての関心にも変化が見られます。

・2019年の感染拡大前と比較して家事・育児時間はコロナ前よりも増えたという回答が男女ともに4割前後

→2021年9-10月時点で男性38%、女性43.9%

 ・地方移住への関心が全年齢でコロナ前よりも10%程度上昇

→2021年9-10月時点での東京圏在住者の34%、2019年12月時点では25.1%

 家事・育児時間の増加や地方移住への関心の高まりは、リモートワーク実施率の高まりと強く関係していると考えられます。

リモートワークで労働時間が増えてしまう理由

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リモートワークのメリットは、

  • 移動時間が削減・短縮できる

  • 集中しやすく生産性が上がる

  • 家事、育児や介護などとの両立ができる

  • 自己投資に時間を使える

などがあります。

一方で、リモートワークは労働時間が長くなりがちになるというデメリットも指摘されています。なぜ労働時間が長くなってしまうのか、理由はいくつかあります。

①オンオフの切り替えが難しい

まずは、オンオフの切り替えが難しいことです。リモートワークでは、オフィスでの業務以上に自己管理が重要になります。

特に、物理的にプライベートの時間を過ごす空間だった自宅で仕事をすることになるので、気分的にも切り分けが難しいと感じる人が多いようです。そのため、仕事に区切りをつけることができず、気づかないうちに長時間労働になってしまうのです。

②休憩時間が決まっていない

オフィス勤務であれば、昼休みの時間がある程度決められているので、1時間休んできっちり自席に戻る習慣がついている人が多いはず。しかし、リモートワークの場合、あくまでも自分のペースで休憩を取る必要があります。

こうなると、意識して休憩を取らないとつい仕事をし続けてしまうことがあります。逆に、一度休憩し始めると、ついだらだらしてしまう人もいるはず。中抜けしてコンビニやスーパーに行ったり、家事をしたりしても誰にもわからないので、仕事に集中できる時間が短くなるケースもあります。

③集中しすぎてしまう

リモートワークでは、周りの目がない代わりに、雑談できる機会も少なくなります。普段なら業務の合間に少し雑談をして、集中と弛緩のバランスを上手く取っていたところが、弛緩の時間が取りづらくなったことは事実です。そのため、集中しすぎて気づいたら長時間労働してしまうことがあります。

④周囲の雑音が気になる

リモートワークは大多数の人が自宅で行っています。家族がいる人は、家族の生活音によって集中力がそがれてしまう経験をしているのではないでしょうか。特に小さなお子さんがいる家庭については、オンラインミーティング中に声が入ってしまったり、パソコンを操作するのを邪魔されてしまったりして、気を遣うことになります。

リモートワークは、子どもの世話と仕事を両立できるメリットの裏側で、仕事の生産性向上を妨げる側面もあるのです。その結果、子どもが寝静まった夜遅くに業務を行う人も出てきます。

⑤業務の相談がしづらい

リモートワークは、オフィス勤務と比べて対面コミュニケーションをする機会が減ります。コミュニケーション手段はメールやチャット、ビデオ会議などとなりますが、それ以外の時間帯には相手の顔が見えません。

どんなにチャットで頻繁に連絡を取っていても、対面から得られる情報量とは開きがあり、孤独感を感じる人もいるでしょう。特に新入社員はコミュニケーションが取りづらく感じ、わからないことがあっても聞くに聞けず、仕事を進めるのに時間がかかってしまうことも多いです。

⑥成果を出すプレッシャーを感じる

リモートワークにおける企業側の課題として、「評価の難しさ」があります。これまでは日常的に働く姿が目に見えていました。しかし、リモートワークによって見えづらくなり、評価の判断基準となるのはその人が出したアウトプット、つまり成果のみ。

このプレッシャーを感じて、とにかく成果を出さなければと、隠れて長時間労働している人もいます。残業時間を規制している会社もありますが、自宅での残業は見えませんから、成果を出すことに必死になるあまりエンドレスで働くことになってしまうのです。

リモートワークで意識すべき時間の使い方

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ここでは、リモートワークで意識すべき時間の使い方についていくつかご紹介します。

作業の種類によって時間の使い方は異なる

リモートワーク下で時間を有効に使うためには、まず時間を何に使うかによって性質が違うことを知る必要があります。

①企画やアイデアを考える「クリエイティブ時間」

企画書をつくったり、商品や事業のアイデアを考えたり、プレゼンテーションの構成を考えたりする時間です。こうしたクリエイティブな作業は行う時間を決めておくことも大切ですが、それよりも、集中力や脳のエネルギーを使う作業のため、疲労がたまっていない時間帯に優先的に組み込むことが重要です。

②書類の申請や細かなタスクを行う「事務処理時間」

経費や交通費精算、勤怠や稟議の申請、数値入力、メールチェック、資料整理など、細かな事務処理をする時間です。事務処理時間は、ちょっとした時間で容易にしてしまえる作業が大半。一方で、細かなタスクであるため溜めてしまいやすく、ついつい後回しにしてしまうことも。定期的に時間を決めて一気に済ませるのも手です。

③ミーティングや商談などの「人対応の時間」

社内の定例会議や研修・イベント、あるいは社外の人との商談や打ち合わせなど、対人関係に使う時間です。時間が固定されていて、自分では動かすことが難しいケースが多いため、前後の時間の使い方を工夫していく必要があります。

④待機・外出などの「すきま時間」

オンラインミーティングの合間や、チャットやメールの返信を待つ時間、ときどき発生する出社や対面が必要な場合の移動時間などの時間です。少し頭を仕事から離して家事を済ませたりぼーっとしたり、スマホで情報収集をしたり本を読んだりなど、使い方に個性が出る部分でもあります。

緊急度低・重要度高に取り組む

リモートワークに限った話ではありませんが、生産性を高め、継続的に成果を出していくためには短期目線と長期目線をうまく使い分けていくことが求められます。有効な時間の使い方をするにあたっては、「7つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著)で提唱された「時間管理のマトリクス」が参考になります。

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4つのうち、どうしても人は、緊急度が高い2つの領域に時間を取られてしまい、「緊急度は低いけれど、重要度が高いこと」は後回しにされがちです。

しかし、第二領域はいわば未来への投資。時間をしっかりと確保し、長期的な目線を持ってこの領域に取り組んでいくことで、周囲との差をつけることができるかもしれません。

任せるもの、人に聞くものを見極める

リモートワークにおいては、コミュニケーションの課題が多く挙がります。上司や同僚の顔が見えないため、質問しづらかったり、人に仕事を頼みづらかったりするのです。これまでのようなオフィス勤務であれば、なんとなくの判断や相談で察してもらえていたことも、リモートワークだとしっかりと主張しなければ伝わりません。

なかなか自分から主張したりヘルプの声をあげたりすることができず、1人で抱えてしまって仕事が長引く、というケースは珍しくありません。

この状況で求められるのは、「何を人に任せるべきか?」「何がわからないのか?」を整理すること。思考を整理して、任せることや人に聞くことをクリアにしていくと、時間のムダ遣いを避けることができるでしょう。

リモートワーク生活を最大限に豊かにする時間管理方法

リモートワークの中で時間を無駄にせず、有効に使っていくためには、3つのプロセスが考えられます。

①所要時間を見積もる

まずは、1つのタスクにかかる時間を見積もります。人対応の時間なら30分や1時間などきっかり決まっていると思いますが、それ以外はざっくりしてしまいがち。クリエイティブな時間や、事務処理時間も、かかる時間を見積もっていくと後々便利です。

また、会議や商談前の15分ほどは、資料準備、ツールの動作確認などに充てる人も多いでしょう。その時間も確保しておくとスケジュールがより見えやすく、スムーズになります。

入社したばかりの人や、初めて行なう仕事の場合、所要時間の見積もりを大きく外れてしまうこともあります。その場合でも、あらかじめ見積もっておけば、見積もりと実際との差が可視化されるため、次の見積もりの精度が上がります。だから初めての仕事であっても、所要時間をざっくりと見積もってみることをおすすめします。

②タイムスケジュールを作る

次に行うのは1日単位、1週間単位でのタイムスケジュールをつくることです。このときのポイントや注意点は以下の通りです。

・生活時間を優先的にブロックする

リモートワーク下では、「いつでも家事や育児に時間を使える」状況であるため、「いつかやろう」で結局それらが後回しになる、あるいは逆に家事や育児に時間がかかりすぎてしまい、仕事に戻るタイミングがつかめなくなるといったことが起こります。

そこで、生活の時間を最初に決めておきましょう。育児についてはその場の状況に寄るためあまり決め切ることができないかもしれませんが、家事に充てる時間はある程度固定できるはずです。

また、自己投資や副業の時間を仕事の予定よりも先に決めてしまうのもいい方法です。これらの時間は先に述べた「緊急度は低いけれど、重要度が高いこと」。未来につながる活動なので、優先的にブロックし、それ以外の時間で仕事を終わらせる意識を持つことで生産性も上がっていきます。

・朝の時間を有効活用する

朝活をしようと思ったことがある人は多いのではないでしょうか。朝の時間は身体も頭も疲労がたまっておらず、エネルギーにあふれた状態です。そんなフレッシュな時間帯を有効活用しない手はありません。

自己投資や副業はもちろん、本業における重要タスクやクリエイティブな作業をこの時間に充てるのもいいでしょう。始業直後にその日のメインタスクをこなしてしまえば、残りの時間も精神的なゆとりを持って使うことができます。

・バッファを設ける

ビジネスの場面における「バッファ」とは、時間的なゆとりのこと。所要時間として見積もった時間よりも少し長めにスケジューリングしておくことで、前の予定が長引いたり、想定外の差し込み業務が入ってきたりしても、ゆとりを持って取り組むことができます。

ただし、商談やミーティングを長引かせる=相手の時間を奪うことになるので、「人対応の時間」については注意が必要。バッファというよりは、早めに切り上げるくらいの意識が大切です。

・スケジュールは前日までに決める

その日の朝1日のスケジュールを立てる人も多いですが、できれば前日までに決めておけるとよりスムーズに始業できます。というのも、人が1日にできる意思決定の数は決まっていると言われており、何かを決めるたびに脳は消耗していきます。

「スティーブ・ジョブズは着る服を決めるというエネルギーの消耗を避けるため、毎日同じ種類の服を着ていた」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

スケジュールを前日までに決めておくことで、仕事の重要な場面で意思決定の質を高めることにつながります。

 

③タイマーを使う、締め切りを設ける

タイムスケジュールができたら、いよいよ「執行」のプロセスです。この段階では、タイマーを使ったり、締め切りを設けたりしながらスピードを上げていくことが大切です。

代表的なテクニックは「ポモドーロ・テクニック」。25分間作業をし、5分間休憩するというリズムで進めると、集中力を切らさずに効率が上がると言われています。見積もった所要時間に合わせてタイマーをセットし、ゲーム感覚でこなしていくと楽しさも出てきます。

また、戦略立案やプログラミング、大量のライティングなど、1日で終わりそうにない作業、あるいはブラッシュアップしようと思えばいくらでもできてしまうような作業は、自分で締め切りを設けてみましょう。締め切りを設けることで生産性が上がる「締め切り効果」を利用することにもなります。

リモートワークが進むと時間の使い方はより多様になる

リモートワークの浸透はここ2~3年ほどで起こった急激な変化ではありましたが、今後完全に2019年以前の働き方に戻ることはないだろうと予測されています。

日本の会社員に絞れば、2021年現在のリモートワーク実施率は3割強。ですが、今後はより便利なツールが生まれ、リモートワーク可能な業務は増えていくでしょう。これにより、家事や育児、副業をはじめ、働く人の時間の使い方はより多様になっていきます。

オフィスや現場で働くにも、自宅でリモートワークをするにしても、誰にとっても1日は24時間。使い方を工夫して、豊かな時間の過ごし方にしたいですね。