
タイムマネジメントスキルの計測とスキル向上のためにできること
皆さんは普段時間をうまく使えていますでしょうか?時間の使い方に苦手意識があり、「時間を無駄遣いしている」「有効に使えていない」と感じている方は多いのではないでしょうか。
時間をかしこく使うには、タイムマネジメントスキルを身につける必要があります。この記事ではハーバードビジネスに寄稿された記事を参考に、タイムマネジメントスキルとその向上のためにできることは何かを紹介していきます。
タイムマネジメントの必要性

どんな人でも平等に持っているものーそれは1日24時間という時間です。この与えられた時間をいかに有効活用できるかどうかで人生の豊かさが変わってきます。ここではタイムマネジメントの必要性を三つの理由をもとに説明します。
プライベート時間の確保
プライベート時間を確保したいと考える人の割合は年々増加しており、逆に仕事を優先したいと考える人の割合は減少傾向にあります。
ワークライフバランスという言葉が注目されるようになった今では、仕事とプライベートを区別し、プライベートの時間をしっかりと確保できるような働き方を望む人が増えているようです。
また、プライベートが充実するようになると、仕事に対するモチベーションも上がるため、自分の能力をより活かして仕事に取り組めるようになります。 自分にとっても会社にとっても好循環が生まれるのです。
生産性向上
タイムマネジメントを「時間を管理すること」と考える人もいますが、本当の目的はです。
本質は自分自身の仕事をコントロールすることにあります。もしタイムマネジメントスキルが低い、すなわち自分自身の仕事をコントロールできていないと、無駄な作業をしてしまったり、段取りが組めず業務が回らないなどの支障をきたすことがあります。
逆に、タイムマネジメントスキルが高い、すなわち自分自身の仕事をコントロールできていると、余裕を持って業務にあたることができるため生産性が向上するのです。
副業の時間の確保
最近はパラレルワークやダブルワーク、など時代が注目するキーワードと副業がシンクロして、魅力的な働き方と認識されつつあります。
新型コロナウイルスの影響や、副業を認める企業が増えたこともあり副業をする人の割合が増加傾向にあることは間違い無いでしょう。副業で稼ぐ際に大きな壁となるのが「時間」です。時間を多く確保できればその分副業に時間を割くことができます。
副業は自分の意思で考えて、自分で決定して、自分で行動しないといけないので、タイムマネジメントをできるかどうかが成功を左右します。
「タイムマネジメントスキル」に必要な要素
本やブログ、タイムマネジメントハックやアプリなど、すぐに使えるツールを使ってタイムマネジメントを向上させるためのアドバイスは世の中にたくさんあります。
しかし、ツールだけではうまくいかないというのが、現実でありもどかしいと感じる部分です。
タイムマネジメント能力を高めるには、の3つのポイントを押さえなければなりません。この3つの領域で改善するためのエビデンスに基づいた戦術を提供します。

Awareness ー認識ー
時間が限られた資源であることを理解し、現実的に考えること。
自分はいつも何に時間を割いているのか、それは本当に必要なことなのか、無駄にしている部分は無いかなど時間の使い方を客観視するスキルです。
Arrangement ー調整ー
時間を効果的に使うために、目標、計画、スケジュール、タスクを設計し、まとめること。
タイムマネジメントと聞いてまず最初に思いつくのはこのArrangement(調整)の要素だと思います。物事の優先順位を決めたり、時間を確保することで時間を有効活用するスキルです。
Adaptation ー適応ー
活動を行いながら時間の使い方を見直すことで、途中で中断されたり、優先順位が変わったりした場合に適応すること。
日々の決まった時間を習慣化したり、時間の浪費を防ぐことで不足の事態や急用にも対応できるよう準備するスキルです。
タイムマネジメントスキルの測定
デポール大学(アメリカ)の教授であるディアドル氏が、ハーバードビジネスに寄せた記事の中で実際にタイムマネジメントスキルを測定しました。その結果からわかったいくつかの興味深い結果を以下に示します。
3つのスキル全てが必要
まず一つ目は、上記で述べた「Awareness(認識)」「Arrangement(調整)」「Adaptation(適応)」の3つのスキル全てがタイムマネジメントのパフォーマンスに等しく影響するということです。
つまり、スケジュールやプランニング(段取り力)だけを向上させても、効果的な時間管理に必要な能力の3分の2を無視することになるのです。
これは、新しいアプリやスケジュール帳を使ったとしても、それだけではタイムマネジメント全般の能力はあまり向上しないことを意味しています。
スキルは自然には身につかない
ディアドル氏の調査で、3つのスキルのうち「Awareness(認識)」「Adaptation(適応)」は「Arrangement(調整)」に比べて評価が低い傾向にあることがわかりました。このことから、「Awareness(認識)」「Adaptation(適応)」は希少であり、直接的な介入なしに自然に身につけることは困難であることがわかります。
「Awareness(認識)」のスキルは予定を先延ばしにしたり気が緩んだりするのを防ぐことができ、「Adaptation(適応)」のスキルは活動の優先順位を定める際に役に立ちます。なのでタイムマネジメント能力を向上させるためにはこれらのスキルを自発的に身につける必要があるのです。
マルチタスクとタイムマネジメント
マルチタスクができる人はタイムマネジメントも上手という印象がありますが、実際には何の関係もないことが明らかになりました。
調査の参加者にマルチタスクをどのように感じているかをアンケートした結果、マルチタスクに対する好みはタイムマネジメントスキルと無関係だったのです。
よく考えてみれば当たり前かもしれませんが、マルチタスクをしてもしなくても、タイムマネジメントスキル自体が変わることはないということです。従って時間をかしこく使おうとしてやみくもにマルチタスクに取り組むことはあまり得策ではありません。
自己評価はあいまい
最後に、人は自分の時間管理能力を自己評価する際に、まったく正確ではないことが明らかになりました。調査の参加者の中でも、自己評価と客観的なスキルスコアが一致した人の割合は1%未満でした。
自分の能力について正確な自己認識を持たないでいると時間管理をする際に大きな誤算を産むことにもつながってしまいます。自己評価の方法を確立させ、自分の時間管理スキルを見直すことがスキル向上のために必要になります。
タイムマネジメントスキルを向上させるために
では、どのようにすればタイムマネジメントスキルを高めることができるのでしょうか。この問いに答えるには、自分の現在のスキルレベルを深く掘り下げてみることが唯一の方法です。そのためには、3つのステップを踏む必要があります。順番にみていきましょう。
タイムマネジメントへの自己評価を確立する
先ほども述べたように、まずは自分のタイムマネジメントスキルがどの程度なのかを理解することが大切です。現状を正しく認識することで自分の今の能力がわかりますし、次の改善策を考えたりしやすくなります。
これは、マイクロシミュレーションなどの客観的な評価を用いる、同僚や上司などの他者からのフィードバックを求める、または改善の指標となる行動のベースラインを確立することで実現できます。
自分の好みを自覚する
マルチタスクや積極性など、時間管理に関連する自分の好みや性格を自己認識することで、変化の取り組みが既存の習慣に反してつまずく可能性がある部分についてあらかじめ備えておくことができます。
ここで忘れないでいただきたいのは、あくまで好みや性格ではなくスキルが最も柔軟な個人の属性であり、自己改善の努力に最大の利益をもたらすということです。
優先順位をつける
自分が向上させるべきスキルを特定し、優先的に取り組みましょう。当たり前のことに聞こえますが、「広く浅く」は禁物です。
多くのニーズに適当に対応するようなことは避けましょう。スキルアップの優先順位を決め、最も必要なスキルにまず焦点を当て、次に進むのがベストです。
3つのスキルを向上させる方法

時間管理能力を高めるための、エビデンスに基づく方法は数多くあります。以下はその例です。
ここで注意しておきたいのが、この方法は基本的なスキルそのものを向上するためのものであり、最終的な目標はタイムマネジメントスキルを向上させることだということです。単にこれらの方法を実行することが最終目標ではありません。
「Awareness(認識)」に関するスキル
有効性とは効率性とは異なり、有効性は物事をうまくやること、効率性は物事を速くやることです。どちらも重要ですが、効率を追求することはタイムマネジメントにおいて逆効果になります。ここでは「Awareness(認識)」に関するスキルを向上させるための方法をいくつかご紹介します。
ピークパフォーマンスの時間帯を見つける
1日を3〜4つの時間帯に分け、1週間かけて、最も生産性の高い時間帯から最も生産性の低い時間帯へと順位をつけてみましょう(最も生産性の高い時間帯がピークパフォーマンスです)。
時は金なり
1週間における時間の使い方を詳細に記した時間予算を作成します。このとき、時間を固定時間(やらなければならないこと)と裁量時間(やりたいこと)に分類しましょう。
時間を測ってみる
残り時間ではなく、締め切りが明確なタスクに費やした時間を記録しましょう。
時間に関する自己評価の正確性を高める
何か取り組んだプロジェクトを終えた後、自分がどれくらい時間がかかると思ったか、そして実際にどれくらい時間がかかったかを評価してみましょう。
「未来時間」の視点を持つ
今やっているタスクが、将来どのように役立ち、あるいは害を及ぼすかを考えましょう。(例:今日のプロジェクトのタスクが来週のタスクにどのような影響を与えるか)
サンクコストを避ける
ある活動に時間をかけすぎているかもしれないと思ったら、一歩下がってその重要性を評価しましょう。(例:成果の価値はどの程度か、その活動が終わった場合と終わらなかった場合に誰が影響を受けるか、など)
「Arrangement(調整)」に関するスキル
慣れていないけれども重要な仕事は、学習曲線が急で、必要な時間も予測できないことが多いものです。Arrangement(調整)スキルを身につけるとは、自分の生活をコントロールするために仕事を整理することではありません。自分の生活をコントロールし、それに沿って仕事を組み立てることなのです。
行動や課せられた業務に優先順位をつける
タスクやToDoリスト、ミーティングをリストアップするだけでは十分ではありません。その中で何が1番優先順位が高いのか、いつまでに終わらせなければならないのかを考える必要があります。
緊急性と重要性の違いを認識する
緊急性と重要性は関連していますが、この二つは異なる概念があります。
緊急性の高い仕事は、すぐに行動を起こす必要があるものですが、重要性の高い仕事は、より重要で長期的な影響を及ぼすものです。緊急性と重要性の両方の性質がある仕事は、最も優先順位が高くなります。
カレンダーアプリを使用する
カレンダーアプリを使用して、タスクや予定の期限を記録しましょう。 計画や依頼があったら、すぐに記録することが重要です。仕事、学校、生活など、項目ごとにラベルや色分けをするとより効果的です。
確保した時間を作る
カレンダーに自分との約束事を作り、最も重要なプロジェクトに専念する時間を確保しましょう。
過小評価によるミスを減らす
計画を立てる際には、予測される所要時間について、中立的な立場の人にフィードバックを求めましょう。
目標を細かく設定する
難しそうな目標を達成するのに苦労しているときは、その目標を分割し、難易度を下げて設定してみましょう。
「Adaptation(適応)」に関するスキル
Adaptation(適応)のスキルは、高いプレッシャーや、時には危機的状況を伴うような状況で試され、向上していきます。
「習慣の積み重ね」を行う
時間管理の行動を、すでに実行している習慣に結びつけましょう。(例:毎晩、夕食を食べるときに、毎日の進捗状況を記録する)
短時間で集中する
やるべきことが山積みになっているときは、15分から30分の間に最大限努力をすることで、先延ばしにするのを防ぎます。
時間管理アプリやチェックリストアプリを試してみる
これらのツールを使用する際は、コストよりもメリットを重視することを忘れないようにしましょう。そうすればアプリを使う時間より、得られるものの方が大きいはずです。
リマインダーを有効活用しましょう
リマインダーには詳細な説明や具体的な内容も入れるようにしましょう。1語や2語書くだけでは、そのタスクの重要性や期待される質などを表現することができません。
不測の事態に備える
計画を考える際は、最善のケースと最悪のケースの2つのシナリオを考えてください。そうすればどんな状況でもある程度対応することができるようになります。
時間の浪費を防ぐ努力をする
この時間は集中するという時間帯をつくり、作業の妨げになるものはなるべくなくすようにしましょう。(例:重要な仕事時間にはスクリーンタイム機能などを使ってSNSをブロックする)
まとめ
働き方に柔軟性が増し、プライベート時間の確保が注目されるようになる中、ますますタイムマネジメントスキルが問われるようになりました。このスキルを高めるには、「Awareness(認識)」「Arrangement(調整)」「Adaptation(適応)」の3つのポイントを押さえる必要がありますが、それぞれ自然に身につくものではありません。
魅力的に見える簡単なツールや方法に頼るのではなく、まずは物事の優先順位を考慮する、時間の使い方に対する自己評価を正確にするなど基本的なことから初めてみましょう。そうすれば次第にタイムマネジメントスキルが身につき、あなたの生活をより豊かにしてくれるはずです。